配偶者居住権とは


配偶者居住権とは、お亡くなりになった方名義の不動産に、配偶者が住んでいた場合に、配偶者の方は、その建物に無償で終身もしくは一定期間住み続けることが出来るという権利です。

遺産分割協議等により、建物の所有者が、配偶者以外の相続人になった場合でも、住み続けることが可能です。

配偶者居住権を設定するための3つの要件


配偶者居住権を設定するためには以下の3つの要件を満たすことが必要です。

  1. お亡くなりになった方の戸籍上の配偶者であること
  2. 亡くなった方が所有していた建物に、亡くなった時に配偶者が居住していたこと
  3. 遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判により取得したものであること


2について、例えば、配偶者の住民票上の住所は対象の建物になっているが、実際は老人ホームに入居しているような場合には認められません。

3について、配偶者居住権を設定する場合、遺言や死因贈与の契約で設定することが多いようです。

また、対象の建物が、亡くなった方と配偶者以外の誰かの共有名義であった場合は、配偶者居住権は認められません。例えば、対象の建物が、亡くなった方とお子様の共有名義になっている場合などです。

配偶者居住権のメリット


配偶者居住権を設定する一番のメリットは、お亡くなりになった方の配偶者が自宅に住み続けることができるということです。

相続人の間で、遺産分割がまとまらないなどの争いになってしまうと、相続財産の大部分を占めることが多い自宅を売却して金銭で分けるといった分割を行うこともあります。
このようなことを避けるために、遺言書や死因贈与契約などで、配偶者の為に配偶者居住権を設定することにより、配偶者が安心して自宅に住み続けられるというメリットがあります。

その他のメリットとしては、相続で自宅の所有権を取得する場合に比べて、配偶者居住権を取得した場合は、取得した財産の価格が低くなるため、預貯金など他の相続財産を受け取りやすくなります。

配偶者居住権は登記できる


配偶者居住権は登記をすることも可能です。登記を行うことで、仮に自宅が売却され、配偶者居住権の存在を知らない第三者が購入してしまったとしても、購入者に対して、配偶者居住権を主張し、立ち退きを拒むことも可能です。

また、死因贈与契約による配偶者居住権は仮登記を行うことが出来ます。仮登記とは権利変動を暫定的に登記することで、登記の順位を保全することです。仮登記を行っておくことで、所有者の生前に配偶者居住権の登記の順位を確保することが可能となります。

配偶者居住権のデメリット


配偶者居住権はメリットばかりではなく、デメリットもあるので注意が必要です。

配偶者は建物の固定資産税の負担をしなければなりません。通常、固定資産税は不動産の所有者が負担しなければならない税金ですが、配偶者居住権を持つ配偶者の場合は、固定資産税を支払う必要があります。

また、配偶者居住権を設定されている不動産は、売却などの処分がしにくくなる可能性もあります。

さらに、配偶者は所有者の許可を得なければ、建物を第三者に賃貸などを行うことができません。仮に、許可なく第三者に賃貸を行った場合には、所有者から配偶者居住権の消滅請求を受け、建物に住み続けることができなくなってしまいます。

まとめ


  • 配偶者居住権は、自分が死亡した場合でも配偶者が自宅に住み続けられる権利
  • 配偶者居住権が設定された建物は財産の価格が低くなるため、預貯金など他の相続財産を受け取りやすくなることもある
  • 配偶者居住権は登記可能
  • 配偶者居住権を持つ配偶者は、固定資産税を支払う必要がある
  • 配偶者居住権が設定された建物を、所有者の許可なく第三者に賃貸すると、配偶者居住権の消滅請求を受ける可能性がある


配偶者居住権は、残された配偶者が安心して自宅に住み続けられることを可能にする権利です。ご自身に万が一のことが起こった際に、ご自宅という配偶者が安心して生活できる基盤を残すことが可能になります。

ご自身に万が一のことがあった後でも、配偶者に安心して自宅で生活をしてもらいたいというご希望のある方は、遺言書や死因贈与契約を使った配偶者居住権の設定をご検討されてみても良いかもしれません。