不動産の処分ができなくなる


相続人が、相続財産である不動産を売却し、または、それを担保として金融機関から融資を受ける場合は、その前提として、不動産を相続人の名義とする必要があります。

通常の相続登記であれば、特に問題はありませんが、長期間にわたり相続登記をしなかった場合は、相続人についてさらに相続が発生していることも多く、相続人の特定や戸籍などの必要書類の収集にかなりの時間と手間がかかってしまったり、関係が希薄な相続人が増えてしまい、相続登記手続きが複雑化する結果、協議がまとまらずに不動産を処分したくても処分できないということになってしまうことがあります

持分を抑えられる


不動産の相続登記を行わなかった場合、対象の不動産は相続人全員で「共同所有」している状態になります。「持分」とは、各所有者が持っている割合のことです。

たとえば、夫がなくなってしまい、相続人は妻と子1人の場合、子に借金や税金の滞納があり、その貸主(債権者)が裁判所に差押えを申立てた場合は、子の法律上の持分2分の1について差押えの登記がなされてしまいます。

仮に、相続人である妻と子が遺産分割の協議を行い、不動産の所有者を妻としていた場合であっても、差押えの登記よりも先に相続登記をしなければ、妻は子の債権者に対して遺産分割による不動産の取得を主張することができません(ただし、妻の法律上の持分2分の1については登記をしなくても主張することができます)。

相続登記は早めに済ませましょう


このように、相続登記をしなかったことによる問題は思いもしない場面で生じることがありますので、なるべく早い段階での対応が重要であるといえます。