銀行から送付された必要書類を紛失した


抵当権を抹消するためには、原則、登記上の所有者と、担保を付けた金融機関の2者が共同で行う必要があります。

実際には、抵当権の抹消は、債務者(所有者)が登記申請するケースがほとんどです。債権者(金融機関)は、債務者(所有者)に登記申請を委任するかたちをとります。債権者(金融機関)は住宅ローンが完済されたら、債務者(所有者)に抵当権抹消に必要な書類を一式渡します。この書類には、抵当権の抹消登記を委任するための「委任状」も含まれます。

この書類一式がなければ、抵当権の抹消登記を行うことができません。もし、書類を紛失してしまった場合、金融機関に連絡して、書類を再発行してもらう必要があります。

ここで、注意が必要なのが、一部、再発行ができない書類があるということです。
登記識別情報通知(権利証書)は再発行をすることができません。

抵当権を設定している金融機関は、抵当権の登記識別情報通知(権利証書)を保管しており、ローン完済後の書類とともに所有者(もしくは債務者)に渡されます。この書類を紛失してしまった場合は、「事前通知」という方法で抵当権を抹消する手続きを行うことができます。

事前通知とは、登記の提出時に、登記識別情報通知(権利証書)が無い場合、法務局から、申請人宛に通知を行い、一定期間内に申請人から間違いない旨の申し出があったら、登記を進める制度です。

日本国内に住所を置いている方は、法務局が通知を発送してから2週間以内に返送しなければなりません。期間を過ぎてしまうと、最初から登記申請をやりなおす必要があります。
登記を途中で中断しなければならないため、不動産の売買など大きなお金の移動を伴う場合は、事前に手続きを行う事を求められる事が多いです。

明治・大正時代の古い抵当権が残っていて債権者がわからない


登記簿を見たら、「個人が債権者になっている」「かなり古い担保が付いていた」という事がたまにあります。どうしたらいいか分からないので、そのまま放置してしまっていると、他の抵当権と同じように、不動産売買しようとする時や、お金を借りようとする時に障害になってしまう事があります。

古い担保が残っている場合に問題になるのが、債権者が誰なのか分からないという点です。

債権者が分かる場合は、その方本人や、本人が亡くなっている場合には、相続人と協力して抵当権を抹消する事ができます。

一方、債権者が誰なのか分からない場合は、債権者と協力して抵当権を抹消するという方法が取れません。ご相談を受けるのは、こちらのケースがほとんどです。

以下の条件を満たす場合、債権額・利息・損害賠償金を供託することで、所有者のみで抵当権を抹消することができます。

  • 抵当権者(抵当権を付けている人)が行方不明
  • 弁済期(支払期日)から20年以上経過している


供託とは、法務局などにある供託所に金銭等を提出することで、「支払った」という事実を明確にしたうえで、債権者への支払いを供託所に依頼できる制度です。供託には弁済供託という種類があり、債権者が受け取りを拒否した場合や、債権者が不明な場合に利用されます。

利息と損害賠償金を供託すると聞くと、かなり高額なイメージを持たれると思いますが、明治時代・大正時代の抵当権は、債権金額が数十円・数百円のものが多く、供託金額も数千円で済むことがほとんどです。裁判手続き等を利用するより短期間で安価に抹消手続を行うことができます。

弁済供託にも注意点があります。

  • 登記簿に記載されている債権額が大きい金額であればあるほど、供託金額が高額になってしまう(特に戦後に設定されているもの)
  • 債権者が法人である場合は、登記簿等が存在する可能性があり、行方不明とみなされない場合がある
  • 利息や損害賠償金は放置しておくと増加していく


早めに対応を行うことで、費用を抑えることができます。お心当たりのある方は、お気軽にご相談ください。