自筆証書遺言とは


遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類あります。それぞれを簡単に説明すると、「自筆証書遺言」は自分で作成した遺言書、「公正証書遺言」は公証役場で公証人が作成した遺言書、「秘密証書遺言」は自分で作成した遺言書を、内容は秘密にしたまま公証人に遺言書として証明してもらった遺言書です。

今回、法務局での保管対象となるのは、自筆証書遺言です。

自筆証書遺言は、遺言を残したい人が紙とペンを使って、遺言の内容、日付、氏名、全てを自筆で書き、押印する必要があります。パソコンでの作成は認められていません。遺言書が複数枚になる場合は、全てのページに署名と押印が必要です。自筆証書遺言は、自宅で保管されるケースがほとんどです。

※2019年1月13日より、自筆証書遺言の方式が緩和され、財産目録については、パソコンなどで作成したものや、通帳のコピーなどでも認められるようなりました。
自筆証書遺言の方式緩和。財産目録は自書する必要がありません。

手軽に作成することが可能な反面、以下のようなデメリットもあります。

  • 内容に不備がある場合、遺言書として認められない
  • 相続人が遺言書の存在を把握していない
  • 紛失・廃棄、改ざんのリスク
  • 家庭裁判所での検認手続きが必要


遺言書を自宅で保管することのリスク


遺言書を自宅で保管することには以下のようなリスクがあります。

  • 遺言書の紛失、廃棄
  • 遺言書の隠匿、改ざん、意図的な廃棄
  • 上記による相続トラブルの発生


法務局で保管することのメリット


自宅保管のリスクを減らせる


法務局での保管料は1件につき3,900円と安価に利用することができ、前述した、紛失、廃棄、隠匿、改ざんなどのリスクを減らすことができます。

検認の手続きが不要になる


遺言書が自宅で保管されていた場合には「検認」という手続きが必要です。検認とは家庭裁判所に遺言書を提出し、開封を行うことにより、相続人に対し遺言書の存在を知らせ、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きです。法務局の保管制度を利用することで、検認手続きは不要になります。

遺言書の存在確認が容易になる


また、相続人は遺言書保管所に遺言書が預けられているか確認することができます。全国どこの保管所でも確認の請求を行えるので、遺言書を預けた保管所に出向く必要がありません。法務局の保管制度を利用することで、遺言書の存在確認が容易になります。

もちろん、遺言者は預けた遺言書の内容を確認したり、預けた遺言書を返してもらったりすることができます。

メリットデメリット

自筆証書遺言書保管制度の注意点


メリットも多い法務局での保管制度ですが、注意するべき点もあります。

遺言書の内容審査はしない


法務局で行うのは、あくまで遺言書の「保管」であり、遺言書の「内容」について審査を行うわけではありません。「保管制度を利用してきちんと保管していたのに、内容に不備があって遺言書として認められない」ということがないように、遺言書を作成する際は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

代理申請が認めらていない


遺言書保管の申請は、代理人による申請が認められていないため、遺言者本人が住所地か本籍地もしくは、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局に出頭して手続きする必要があります。

氏名、住所変更時には届出が必要


保管の申請を行った後に、氏名や住所に変更があった場合、変更事項の届出が必要となります。変更の届出は全国どこの遺言書保管所でも可能です。

まとめ


  • 2020年7月10日より法務局で自筆証書遺言書の保管が可能となる
  • 法務局で保管することにより以下のようなメリットがある
  • 紛失、改ざんなどのリスク軽減
  • 遺言書の検認手続きが不要となる
  • 遺言書の存在確認が容易となる
  • 保管はしてくれるが、遺言書の内容の審査は行ってくれない


今回は、自筆証書遺言書の保管制度について解説しました。この制度を利用することで遺言書を安全に保管することができます。保管の申請も難しくはなく、どなたでもご利用しやすくなっています。

しかし、この保管制度は遺言書の内容の正しさを証明してくれるものではありません。せっかく遺言書を残し、安全に保管したとしても、遺言書の中身に不備があって無効になってしまえば意味がありません。ご自身で遺言書を作成される場合でも、司法書士など法律の専門家にアドバイスを貰うことをお勧めします。

舞鶴中央司法書士事務所では、初回相談は無料で対応しております。相続に関して少しでも不安なことがあればお気軽にご相談ください。