自筆証書遺言の方式緩和
2018年7月6日に、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立しました。この中の自筆証書遺言の方式緩和に関する部分が、2019年1月13日より施工されています。2019年1月13日以降に作成された自筆証書遺言に関しては、この方式緩和が適用されます。ただし、施工以前に作成された自筆証書遺言には適用されません。
今回の方式緩和により、自書以外で作成した財産目録も認められることになり、財産目録作成の負担が大幅にヘルことになります。
自筆証書遺言に関するルールが変わります。 | 法務省
自筆証書遺言の方式緩和以前
方式緩和以前は、自筆証書遺言は全文を自書する必要がありました。自書というのは自分で書くことを言います。代筆や、パソコンでの作成、コピーの添付などは認められていませんでした。
遺言書を作成する場合、「財産目録」を作成することがあります。財産目録とは、被相続人の財産を一覧化した書類のことです。預貯金や不動産、証券などの資産、借金などの負債、全てを洗い出して一覧化します。被相続人の財産が多い場合、財産目録はかなりのボリュームになります。
財産を多く所有している方、ご高齢の方にとっては、全文を自書するというのは大変負担が大きいものでした。また、遺言書を残していたにもかかわらず、書き間違いなどで、遺言書を使った相続の手続きが上手く行えないことも発生していました。
方式緩和後の財産目録作成
「財産目録」は自書の必要がなくなります。パソコンで作成したものや、通帳のコピーなどでも認められるようになります。注意しなければならないのは、パソコンなどで作成した財産目録でも全てのページに遺言者による署名と捺印は必要です。
また、自書以外が認められるのは別紙となる「財産目録」のみです。どの財産を誰に相続させるかなどを書いた遺言書の本体部分は今までどおり、自書する必要があります。
方式が緩和されても自書が必要な部分は残っているため、字を書くことが難しい方については、従来通り、公正証書等に頼らなければ遺言の作成ができません。
自筆証書遺言の書き方
参考までに自筆証書遺言書の書き方をご紹介します。
遺言書には以下の内容を記載します。
- 「誰に何を相続させる」など遺言の内容
- 日付、住所、署名、捺印
決まったフォーマットはありませんので、縦書きでも横書きでも問題ありません。遺言書本体となる部分は、全文自書する必要があります。
別紙として「財産目録」を作成することが多いです。この「財産目録」が今回の方式緩和により、パソコン等での作成が認められることになりました。「財産目録」の各ページには、自筆署名捺印を行う必要があります。
記載を修正する場合は、訂正個所に捺印の上、署名を行い、修正を行います。
下図の赤枠囲みの部分が自書が必要な部分です。
まとめ
- 2019年1月13日より自筆証書遺言の方式緩和が開始
- 「財産目録」は、パソコン等での作成も可能になる
- 全てのページに自筆の署名と捺印は必要
方式緩和により自筆証書遺言の作成が容易になり、法務局での保管制度も開始され、遺言書が作りやすい環境が整ってきています。弊所では相続に関する様々な相談を承っております。「自分で遺言書を作成したけど、本当にこれで大丈夫なのか不安」ということもあるかもしれません。気になることがあればお気軽に弊所までご相談ください。
参考:
自筆証書遺言の保管制度
自筆証書遺言書保管制度。保管申請の流れ。