会社の登記義務


会社を設立し事業を行うためには、設立登記を行い、法務局に会社の情報を登録することが法律で義務付けられています。登記した情報は一般に公開され、取引先の実態確認などさまざまな用途に活用されています。

登記は設立時だけではなく、登記した情報に変更があった場合なども必要になります。

例えば役員の更新手続きです。株式会社の役員の任期は、定款で自由に定めることができます。発行する株式の全部につき譲渡制限規定のある株式会社であれば、取締役や監査役の任期を最長で10年とすることができます。

注意しなければならないのが、役員の構成に変更がない場合であっても、任期が切れるたびに、役員の更新の手続き(重任登記)が必要な点です。

個人経営、家族経営の会社であれば、経費削減などの観点から、可能な限り任期を長く設定することが多くあります。

このように、役員の任期は最長で10年と定められているため、どの株式会社であっても、10年に1回は、必ず登記手続きが行う必要があります。

みなし解散とは


前述したように、株式会社は必ず10年に1回は登記を行う必要があります。10年を過ぎても登記がされていない会社はすでに活動していない可能性があります。

法務省は、活動していない会社の整理のため、12年以上登記がされていない株式会社に対して、法務大臣が官報公告を行い、みなし解散の対象になっていることを通知します。
(一般社団法人又は一般財団法人は5年以上登記がされていない場合が対象になります。)

通知を受け取った後も、届出や登記など何も対応しなかった場合、登記官の職権により解散登記がなされます。

また、通知を受け取ったということは、登記義務を怠っているということです。登記手続きを怠った場合は、最大で100万円の過料に処される可能性があります。

なぜみなし解散を行うのか


平成26年度以降、毎年、法務局は休眠会社・休眠一般法人の整理作業を行っています。整理作業を行うのは以下の理由からです。

(1)事業を廃止し,実体を失った会社がいつまでも登記上公示されたままとなるため,登記の信頼を失いかねないこと
(2)休眠会社を売買するなどして,犯罪の手段とされかねないこと


引用元: 法務省 | 休眠会社・休眠一般法人の整理作業について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00082.html

みなし解散の流れ


では、みなし解散はどのような流れで行われるのか詳しく見ていきましょう。

通知


最後に登記手続きを行ってから12年が経過した株式会社、5年以上経過した一般社団法人・一般財団法人については、法務大臣が官報公告を行い、管轄登記所から通知書が発送されます。公告の内容は以下のようなものになります。

①事業を廃止していない場合は、公告から2ヶ月以内に、「まだ事業を廃止していない」旨の届出を管轄登記所にする必要があります。

②2ヶ月以内に届出がなく、また、必要な登記手続きも行わなかった場合は、解散したものとみなします。

事業を継続している場合の対応


事業を継続している場合は、届出と登記を行う必要があります。

「まだ事業を廃止していない」旨の届出は、この通知書に所定の記載事項を記入して、法務局に返送する形で行います。

届出だけを行っても、登記を行わなければ翌年以降もみなし解散の対象となり続けるので、必要な登記手続きも行います。

通知後に何も対応を行わなかったら


官報公告後2ヶ月以内に、届出も登記も行わなかった場合、株式会社は、2ヶ月の期間満了時に解散したものとみなされ、法務局は、その解散登記を行います。

さらに、解散登記後においても継続して登記手続きが行われなかった場合は、解散登記後10年の期間経過をもって、登記記録(登記簿)は閉鎖され、更に閉鎖から20年を経過した場合、閉鎖登記記録(閉鎖登記簿)は廃棄されます。

まとめ


今回は「みなし解散」について解説しました。

登記を怠ると、知らない間に解散登記がなされ、登記簿が閉じられていたということが起こりかねません。

また、株式会社は、税務署等に対して休眠の手続きを行うことにより、休眠会社となることができますが、この場合においても、登記手続きを怠ったときは同様にみなし解散の対象となるため注意が必要です。